2014年1月17日金曜日

本:夜露死苦現代詩 (ちくま文庫)

 老人ホームの住人たちのうわごと、死刑囚の俳句、精神を患った人がノンストップで書き綴る言葉、暴走族の特攻服やヤンキーの学ランに刺しゅうされたポエム、NASやJAY-Zのリリック、はたまた相田みつをの書(!)などを取り上げ、そこに「詩情(ポエジー)」を見出していく、言ってみれば「物好き」な本。
 下手すると「変わったご趣味ですね」なんて言われそうな作業。しかし、「精神病院」だからって、「ヤンキー」だからって、「エロサイト」だからって、「相田みつを」だからって、関係ない。言葉に貴賎なしという著者の都築さんの態度に寛容さを感じる。都築さんはこの作業をハイカルチャーとしての詩(現代詩)に対してのアンチテーゼと位置づけているのだと思う。もっと下世話に。もっと馬鹿に。もっとエロく。もっと国道沿いに。(よくわからんけど)
 これらのことばたちのなんとリアルなこと。いや、無菌化された「リアル」なんて言葉より、「生生しい」と言った方が近いかもしれない。じっとり湿って、微生物が繁殖してそうな「生」の質感(「死」を目前にした老人たちや死刑囚の言葉ですら!←いや、「だからこそ」か)。
 巻末の谷川俊太郎氏との対談にもあったように、本来、この本で挙げられたことばたちを、所謂ジャンルとしての「現代詩」と比較・対象化すること自体が筋違いで、一種のアウトサイダーアートとして観賞すべきものなのかもしれない。そうなってくるともうあとは単純に「好き嫌い」になってしまうのだが、下世話で、生々しく、ばかばかしく思えるようなこれらの言葉たちが、少なくとも自分には「高尚(そう)な、なにか」よりも断然愛おしく思えた。
 いまの自分にはどうひっくりかえってもこんなことばは紡げそうにない。(あたりまえだ)





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